医療法人社団 松伯会 山王クリニック    内科、循環器科、精神科、皮膚科

東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー25階 tel 03-3580-5001 理事長 渡邉基樹 院長 鈴木努

「 @親切にA正確にB素早く 」を理念としているのクリニックです - - - 本院は千葉県匝瑳市にあります。

うつ病の診断(かつての分類)

(1) 身体に基盤のある(器質性および症状性うつ病
脳梗塞後、脳萎縮、パーキンソン病、内分泌病

(2) 内因性うつ病
焦燥と抑うつ。無気力で自責感が強い。→薬物療法の有効率が高い。メランコリー親和型。cf.退行期うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症のうつ病状態、内因反応性気分失調(Weitbrecht)

(3) 心因性(反応性)うつ病
不全感と倦怠感。心因反応性に誘発されたうつ状態(原因として適切で充分な葛藤状況が証明されること)。薬物の効果は部分的。認知療法や行動療法が有効。ディスチミア親和型。

c.f. 内因反応性気分失調(Weitbrecht)が最も高頻度に認められる。1回限りのストレスよりも、持続的な疲労状態や仕事や社会的立場の喪失、結婚や引越しなど環境の変化により自律神経失調症状として、頭痛、肩こり、腰痛、めまい、胸焼け、冷え、のぼせ、動悸および息切れなど多彩な身体症状を呈することが多い。

非薬物療法 (non-pharmacological therapy)

1)精神療法

@認知行動療法 (cognitive behavioral therapy: CBT)

A人間関係療法(Interpersonal psychotherapy: IPT)

B行動活性化(behavioral activation)

C家族療法 (family and couple therapy)

D問題解決療法 (problem solving therapy)

E力動学的精神療法 (psychodynamic psychotherapy)

F支持的精神療法 (supportive psychotherapy)

Gマインドフルネス認知療法 (mindfulness based cognitive therapy: MBCT)

2)支持援助 (supportive care)

@治療者主導の自己管理法(clinician-guided self-help

Aリラクゼーションと活動指導

B運動

3)環境調整

うつ病の入院治療

なぜ入院治療がよいのか

1.刺激を避け、充分に休養がとれるから(疲労回復)
うつ状態で精神科外来を受診すると多くの場合下記にあげたような薬物治療が始められます。ところが、一般にうつ状態の方は心身の活力(エネルギー)が低下しているため、薬の副作用(頭重感、吐き気など)によってさらに疲れてしまう場合があります。また、家族、親しい友人と話すことも負担に感じることが多いのです。ですから、外来で薬物療法を始める前に、入院して一人になって外界との刺激を避け、規則正しい生活をすることで心身の疲労を回復させることが重要です。

2.自分の気持ちに正面から向かい合えるから(内省と受容)
入院後ご希望により睡眠薬を処方いたしますが、2,3日はぐっすり眠れないことが多いと思います。そして、なんで自分がこんなところにいるのか、こんなことで症状が治るのかと不安になります。場合によっては3日目ごろに退院したいという方もいらっしゃいます。「この症状一生が治らないかもしれない」「もう仕事ができないかもしれない」など強い不安やあせりがある場合、つらい気持ちを振り払おうとせず十分に味わうようにしてください。ベッドに横たわり静かにしているとその症状が自分が感じている自然な感情であり、振り払うべきものではないと思えるようになります。そして、常に心地よい気分でいることのみが目標ではなく、嫌な気分になっても自分を律することができればよいのです。

3.人間関係を楽に捉えられるようになる(行動変容)
精神科に入院するということは一般の病院に入院することと比べて、非常に抵抗があると思います。ところが、入院された方が揃っておっしゃることは、「精神の病気を患うことは特別なことではないんだ」、「みんな優しくて頑張りすぎた人ばかりなんだ」ということに気づくことが多いのです。入院されている方は皆優しくて、気を使う方ばかりですので、ちょっとした会話で救われる思いをすることもあるでしょう。他の患者さんの頑張る姿を見て勇気づけられることもあります。

実際の入院プログラム

1.入院期間
症状に応じて前後しますが、少なくとも1ヶ月は必要です。

 

2.精神療法 
週に3回担当医が面接します。最初は体の不調(血液検査の結果、睡眠、食欲、頭痛、腰痛など)について、後半は入院して感じたことを中心に問診します。必要があれば認知療法という自分の考え方の偏りに焦点をあてて話を進めることもします

3.心理教育および集団精神療法
2週目に健康教室、安眠教室、不安軽減プログラムなどについて知識を高めることで、症状に自ら対処する方法を身につけます。

4.薬物療法
最近の抗うつ薬、特にSSRI(serotonin selective reuptake inhibitor セロトニン選択性再取り込み阻害薬)は従来の三環系抗うつ薬と比べ、副作用は少なく、抗うつ作用は高いといわれております。しかし、一旦抗うつ薬を始めると減量時にも神経を使います。そこで、抗うつ薬使用は最終手段にしたいと考えています。特に 内因反応性気分失調(Weitbrecht)のような場合は、安静と抗不安薬の屯服で症状が改善することが多いと考えられます。

薬物療法について (当院採用の薬物に限ります)

抗不安薬 antianxeity

ワイパックス(loraazepam)
短時間作用型の抗不安薬。苦くないので舌下して服用することもできます。

デパス(etizolam)
短時間作用型の抗不安薬。抗不安、筋弛緩、催眠作用が強く、眠り薬として使用します。

ソラナックス(アルプラゾラム alprazoram)
屯服で使用する抗不安薬。催眠作用が最も少なく、抗不安作用は強力。

メイラックス(ロフラゼプ酸エチルEthyl loflazepate)
長期作用型の抗不安薬。一日一回内服すると一日中効いています。

睡眠薬 hypnotics

ハルシオン(トリアゾラム triazolam)
超短時間作用型の睡眠薬。不眠時の追加薬として使用します。

ブロチゾラム( brotizolam)
超短時間作用型の睡眠薬。不眠時の追加薬として使用します。

サイレース(フルニトラゼパム flunitrazepam)
中時間作用型の睡眠薬。ロヒプノールと同じもの。

ロゼレム(ラメルテオン ramelteon)
ベンゾジアゼピン系ではないが効果は弱い。メラトニン類似物質。昼と夜のサイクルを調整する働きがある。

ベルソムラ(スポレキサント sporexant)
オレキシン(覚醒ホルモン)の阻害薬。中長時間作用。

抗うつ薬 antidepressant

スルピリド (sulpiride)
150-300mg max600mg
元来は胃潰瘍の薬。男性の意欲低下例および思春期や更年期の女性に有効。反面、体重増加、月経不順や乳汁分泌などの副作用を認める。

アナフラニール(クロミプラミン clomipramine hydrochloride)
50-150mg max225mg
焦燥感の強い場合や睡眠薬の補助として使用する。口の渇き、便秘などの副作用を認める。

アモキサン (アモキサピン amoxapine)
三環系 口の渇き、便秘、眠気などの副作用はみられるが、抗うつ効果は強い。25-75mg 最大300mg 

パロキセチン ( paroxetine hydrochloride)
SSRI 10mgから最大40mg 1日1回 セロトニン再取り込み阻害 更年期女性に有効なことが多い。うつ病の他にパニック障害(最大30mg)、強迫性障害(20-50mg )、社会不安障害(10-40mg )、PTSD(10-40mg)の効能あり。18歳未満は自殺リスクが高くなるため慎重投与。

セルトラリン(sertraline)
SSRI 25-100mg 1日1回 うつ病の他にパニック障害、PTSDに適応あり。

デジレル(トラゾドン trazodone)
セロトニン2A阻害薬。 75-200mg 口の渇きは少ない。鎮静が強いので、実際は寝る前に一度睡眠補助薬として使用する。

サインバルタ(デュロキセチン duroxetine hydrochloride)
SNRI 選択的ノルアドレナリン取り込み阻害薬 20-60mg

リフレックス(mirtazapine)
NaSSa ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性 15-45mg

抗精神病薬 antipsychotics

エビリファイ(アリピプラゾール aripiplazol)
SSRI 3-15mg向精神病薬で唯一うつ病の適応あり。抗うつ薬と併用。

ジプレキサ(オランザピン olanzapine)
躁うつ病のうつ状態のみ適応あり。2.5mg-20mg

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